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【第1回】足場工事の正しい積算方法|公共積算基準で読み解く大規模修繕コストの真実
積算2026-04-03NEW

【第1回】足場工事の正しい積算方法|公共積算基準で読み解く大規模修繕コストの真実

【第1回】足場工事の正しい積算方法|公共積算基準で読み解く大規模修繕コストの真実

概要:公共積算基準で読み解く!大規模修繕コストの真実・第1回。足場工事の数量の拾い方・単価の根拠・よくある水増しパターンを、国土交通省の公共建築工事積算基準に基づいて徹底解説します。

SERIES 第1回

公共積算基準で読み解く!
大規模修繕コストの真実

連載シリーズ|対象:理事会・修繕委員

「直接」と「共通」― 似て非なる仮設の住み分け

まず、積算の世界には「直接仮設」と「共通仮設」という、似ているようで全く違う二つの顔があります。

直接仮設

その工事専用」の舞台装置です。足場、シート、養生など、それがないとタイルも塗料も塗れない、文字通り工事に直結する費用です。

例:足場・養生シート・安全ネット

共通仮設

現場全体のインフラ」です。現場事務所の電気代、仮設トイレ、現場監督の机、防犯カメラ。工事全体を支える「裏方」の費用です。

例:現場事務所・仮設電気・仮設トイレ

積算のポイント

足場は「直接仮設の主役」です。ここを読み違えると、後の全工程がガタガタになります。見積書で「仮設工事一式」とまとめられている場合、直接仮設と共通仮設が混在していないか必ず確認しましょう。

足場工事とは何か

大規模修繕工事において、足場工事は全体工事費の15〜25%を占める重要な工種です。外壁補修・塗装・防水など、ほぼすべての工事が足場の上で行われるため、足場の数量と単価が適正かどうかは、見積書全体の信頼性を左右します。

ところが、管理組合の皆さんが受け取る見積書には「足場工事一式 ○○万円」とだけ書かれているケースが少なくありません。公共工事の積算基準では、足場の数量は平面図・断面図をもとに掛㎡単位で精密に算出します。今回はその考え方を解説します。

足場の基本構成と「壁からの離れ」

マンションの大規模修繕で使われる足場は、主にくさび緊結式足場(ビケ足場)枠組足場です。いずれも、建物の外壁から一定の距離(壁からの離れ)を確保して設置します。

公共建築工事積算基準では、この「壁からの離れ」はL = 60cmが標準とされています。これは足場外周長を算出するための積算上の慣習的な基準値であり、実際の現場では足場の種類・建物形状・作業内容によって異なります。

【補足】 なお、労働安全衛生規則(第570条等)では、墜落防止の観点から作業床と躯体(壁)との隙間は原則30cm以下とすることが定められています。積算基準の「60cm」は足場全体の設置幅を算出するための数値であり、安全規則上の「隙間の上限」とは目的が異なります。混同しないようご注意ください。

図1足場の平面図(上から見た図)― L(周長)と足場延長の関係

建 物
L(周長)
60cm
足場延長 = L + 8.0m
足場延長 = L(建物から60cm離れた赤線の周長)+ 8.0m
L(周長)= 建物から60cm離れた赤線
寸法線(足場延長 = L + 8.0m)
建物

図1 足場平面図(概念図) 足場延長 = L(建物から60cm離れた周長)+ 8.0m

図2足場の断面図(横から見た図)― H = 建物高さ + 1m

GL
建物外壁
建物屋根ライン
足場天端(H)
+1m
H
建物高さ
足場
H = 足場高さ(建物高さ + 1m)
建物屋根ライン
足場天端(+1m)

図2 足場断面図(概念図) H = 建物高さ + 1m GL:地盤面

図の見方

  • 図1(平面図):上から見た図。建物の外周から60cm離れた位置(赤破線)に足場が設置されます。Hは足場の高さを示します。
  • 図2(断面図):横から見た図。地盤面(GL)から足場の最上部までの高さがH、壁面から足場中心までの距離がL = 60cmです。

足場数量の拾い方

公共積算基準における足場の数量算出は、以下の式で行います:

足場面積(掛㎡)の計算式

足場面積 = 足場外周長(m)× 足場高さH(m)

足場外周長=建物外周長 + 壁からの離れ(L = 60cm)× 8m(四隅分)

※実際には建物形状・出入り口・バルコニーの有無などにより補正が加わります。

具体例で計算してみる

【条件】建物外周:40m × 20m の長方形マンション、地上5階建て(H = 16m)

項目計算結果
建物外周長(40 + 20) × 2120 m
離れ分の加算2.0 × 4(四隅)8.0 m
足場外周長120 + 8.0128.0 m
足場面積128.0 × 162,048 掛㎡

「+ 8.0m」について ― 慣習値と別の算出方法

● 慣習的な加算値(2m × 4か所)

幾何学的には、壁からの離れ(60cm)を四隅に加算すると 0.6m × 2辺 × 4隅 = 4.8m となるはずです。しかし積算実務では、明確な根拠は定かではないものの、業界慣習として「各コーナー2m × 4か所 = 8.0m」が広く用いられています。

● 別の算出方法:建築面積 × 形状係数

建物の形状が複雑な場合(凹凸・L字・コの字など)は、建築面積に形状係数を乗じて足場外周長を算出する方法も用いられます。建物の複雑さに応じた係数をかけることで、実態に即した数量が得られます。

今回の計算式の値では、建物形状によってはかなりの数量差が生じることがあります。複雑な形状の建物では、どちらの方法を採用するかによって見積金額に大きな差が出るため、算出根拠の確認が重要です。

※見積書に「足場外周長 = L + 8.0m」と記載されている場合、慣習値を使用しているケースがほとんどです。建物形状が複雑な場合は、形状係数による算出との比較検討を専門家に依頼することをお勧めします。

単価の根拠と水増しパターン

1

「一式」表記で数量を隠す

「足場工事一式 ○○万円」と書かれている場合、数量の根拠が不明です。必ず掛㎡単位の数量と単価の内訳を求めましょう。

2

壁からの離れを過大に設定する

標準は60cmですが、80cm・1mと設定することで足場外周長が増え、数量が水増しされます。図面と照合して確認しましょう。

3

足場高さHを実際より高く設定する

建物高さに対して足場高さを過大に設定するケースがあります。建物の実際の高さ(図面の階高×階数)と比較してください。

チェックポイントまとめ

  • 足場面積(掛㎡)と単価(円/掛㎡)が明記されているか…割り戻して(件)で表記されていることもあります
  • 壁からの離れが60cmで計算されているか…(図面をみてチェックしてみてください)
  • 足場高さHが建物の実際の高さと一致しているか
  • 養生シート・安全ネットが別途計上されていないか(二重計上に注意)
NEXT

次回の内容

足場の「単価」はどう決まる? 共通仮設費の内訳と計算方法を徹底解説

今回は足場の面積の算出方法を中心に解説しましたが、実はそれだけでは見積金額の妥当性は判断できません。次回はいよいよ「単価」の側に踏み込みます。

  • 足場単価の相場と内訳…材料費・労務費・損料がどう積み上がるか
  • 共通仮設費とは何か…足場以外に「仮設」として計上される費用の全体像
  • 歩掛(ぶがかり)を使った費用計算…高さ・形状・工法によって変わる係数の選び方
  • 見積書で確認すべきポイント…「一式」表記に隠れたコストを見抜く方法

面積の計算式が分かれば、あとは単価との掛け算です。その単価が適正かどうかを判断できるようになると、見積書の読み方がガラッと変わります。ぜひ次回もお読みください。

【こっそりアドバイス】 交渉の場で数量が少なく見積もられていることに気づいても…そっとしておくのも一つの選択肢です(笑)。ただし、数量を絞って単価で帳尻を合わせているケースもあるので、単価もセットで確認するのをお忘れなく。

※本記事は私が知る範囲と1級建築士よりの聞き取りで執筆していますが、積算基準や係数等は時代とともに変化します。内容に誤りがございましたら、お手数ですがご指摘いただけますと幸いです。

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